植田和男日本銀行総裁は9月9日の読売新聞のインタビューで賃金と物価の好循環を見極める情報やデータが年内にもそろう可能性があると発言し、株・債権市場や為替市場はマイナス金利政策の解除を中心とした金融政策の前倒しを意識して動いています。
植田総裁はイールドカーブコントロール(長短金利操作)の柔軟化を決めた今年7月28日の金融政策決定会合後の記者会見で2%の物価目標について「持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っていない」と繰り返し発言していて、今回の発言は一歩踏み込んだ発言ですね。
イールドカーブコントロールって?
イールドカーブコントロール(YCC)とは長短金利操作とも言います。 長期金利と短期金利を操作してイールドカーブを適切な水準で維持する事を言います。 イールドカーブとは債券の利回り(金利)と償還期間との相関性を表したグラフで、縦軸に利回り、横軸に償還までの期間を表した曲線グラフの事です。
短期金利では日銀当座預金のうち、政策金利の残高にマイナス金利を適用して長期金利は国債買い入れオペレーション(公開市場操作)などを行い長期金利を0%程度に推移するようにすることで、維持させます。 そのことで国内金融機関を収益を改善させる政策です。
物価目標2%ってなぜ必要?
物の値段が相対的に2%づつ上がっていく事が理想的だという世界の中央銀行の認識のもとたてられた目標です。 物価が2%づつ上昇していけば物価の上昇に伴って企業収益がよくなり、その結果企業が投資や給与を上げる事ができる事によって経済が発展していける丁度よい数字という事です。 この数字が高すぎればインフレとなり結果、消費は落ち込むこととなり経済は衰退しますし、逆に物価が下がる状態は値下げが相次ぎ企業収益は悪くなることで給与も下がり消費も落ちていく状態になりますからどちらも避けるべきなんです。
今回の発言で市場はどう動いた?
今回の植田日銀総裁のタカ派とも捉える事ができる発言で市場は金融正常化の前倒しを意識し始めました。 総裁は物価安定目標まではまだ距離があり、粘り強い金融緩和を続けると語ったものの市場は日銀による金融正常化観測が一気に台頭してきました。 その為、今後の政策変更時期の予想を前倒しする動きが相次ぎ、日本の長期金利は9年8か月ぶりとなる0.7%に上昇し、東京外国為替市場のドル円は一時145円台後半まで円高・ドル安が進行した。 また軒並み国内の銀行株が大幅上昇しました。
エコノミストの一部では、早ければ2024年1月の政策決定会合でマイナス金利解除の動きが出てくるかもしれないと市場参加者ににおわせて備えを求めているのでは?と意見しています。 円安進行の牽制する狙いでの発言では?との見方もあるが審議委員の「物価の見通しが年内に出来そうだ」との発言も複数みられメインシナリオでは2024年4月にもマイナス金利の解除に動くのではないだろうかと予想を前倒ししています。
今後の投資はどうする?
これらの市場の動きをみて、我々投資をしている者はどう動けばいいのでしょうか? ここ最近のドル円はずっと上昇してきただけに今回の植田総裁の発言は燻っていた円高を待つ人々に朗報となるのでしょうか? 先の事は正直わからないというのが本音です。
今日のドル円市場は少しづつ戻してきています。 ですが、NYタイムになれば再び円が買われるかもしれません。 少なくとも今回の発言で日銀が物価目標2%が安定すればYCCを止める事になりそうです。 中央銀行はFRBも含めてサプライズを避けます。 なぜなら市場はサプライズを嫌います。 サプライズは大きな市場の混乱を招き過剰なボラティリティを誘発します。 過剰なボラティリティは多くの投資家を破産させる危険なものですから中央銀行は政策の変更をする場合は通常、市場との会話を欠かしません。 政策変更をする場合はその随分前に将来的にはそうなるよ、とにおわせておいて市場に対策を促します。 ですから、今回の植田総裁の発言は来年には政策変更の可能性がありますよ。という備えを警告していると捉える事ができます。
実際、日銀がYCC撤廃を実行した場合は長期金利が上昇する事で債券価格は下がり、短期金利はマイナスからプラスになるわけですから銀行には大いに収益向上につながるわけです。 これからの市場で起きる事で銀行株は益々上昇しますが、実際にYCCが撤廃となれば逆に下がりますね。 私個人の考えでは年内に上昇した銀行株は政策変更後は下げる予想です。 「噂で買って事実で売る」という株の格言は覚えておいて損はないです。
また、ドル円は一旦下げてますが再び上昇するでしょう。 依然としてアメリカの経済と雇用は安定してますのでその辺が下がらない限りドル円も上昇局面が続くと見ています。 足元では少しづつアメリカの経済も弱含んでいますし、インフレ再燃も懸念材料です。 インフレ再燃となればFRBは利下げできず日米の金利差は開いたままとなりますのでドル円もドル高・円安が続きそうです。
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