米国のインフレ再燃。

経済

 ここ最近のアメリカは物価が安定してきたように思われていました。 しかし最近の経済指標や原油価格、それにストライキ等を鑑みるとインフレは再び強さを取り戻しつつあるようです。 インフレが再燃すれば利上げが続き益々経済にダメージが蓄積されることとなりそうです。

CPIの上昇と下落。

 先ず、先日13日に発表された8月のCPI(消費者物価指数)を見ていきましょう。  

 CPIは消費者物価指数とも言います。 米国では人口の90%をカバーする全都市消費者物価指数を使用しています。  また米国の労働統計局が発表しています。 その中でも天候による影響が大きい食料や他国の需要と供給に影響されるエネルギーとを除いたコアCPIも同日同時間に発表されています。 政策金利を決定しているFRBは特にこのコアCPIを重要視しています。

 それぞれの結果は、

  • CPI(前月比)は予想と結果が一致して0.6%、先月の0.2%からはかなり上昇しています。
  • CPI(前年同月比)は予想3.6%に対して結果は3.7%と予想より上昇し、前月の3.2%よりこちらも上昇しています。
  • コアCPI(前月比)は予想0.2%に対して結果は0.3%で予想に反してわずかに上昇。
  • コアCPI(前年同月比)は予想と結果が一致して4.3%。 先月の4.7%からは下落してます。

これらの数字を見て気づくことは食料とエネルギーを除けば変化がさほどない事に気づきます。それぞれの項目は前年同月より下落しているのですが、OPEC+の減産が延長されたことでの原油価格の高騰が影響してCPIの数値に表れているようです。 米国の経済は依然として好調であり米国エネルギー情報局の試算では年末までは好調な需要が続きそうとのことで増々エネルギー高は続きそうです。

PPIの上昇。

 次にPPI。 9月14日に発表された8月のPPI(卸売物価指数)を見ていきましょう。

 PPI(卸売物価指数)とは生産者物価指数とも言い、生産者が出荷した製品や原材料などの販売価格の変動を調査・算出した経済指標です。 こちらもCPI同様で天候による影響が大きい食料や他国の需要と供給に影響されるエネルギーとを除いたコアPPIも同日同時間に発表されています。

それぞれの結果は、

  • PPI(前月比)は予想0.4%に対して結果は0.7%と大幅上昇です。 先月の0.3%からも乖離しています。
  • PPI(前年同月比)は予想1.2%に対して結果は1.6%とこちらも予想に反して大幅上昇。 先月の0.8%からは2倍に上昇している事になります。
  • コアPPI(前月比)は予想・結果ともに0.2%と先月の0.3%から小幅に下落しています。
  • コアPPI(前年同月比)はこちらも予想・結果ともに2.2%と先月の2.4%から下落しています。

これらの数字を見てもCPIと同様でエネルギーや食糧価格の影響で全体的なPPIは上昇していますが変動の激しい材料以外は落ち着いてきているのがうかがえます。

原油価格の上昇。

 先ほどのCPIとPPIの両方の指数が上昇している原因はエネルギー価格の影響が大きいようです。 先ほども触れましたがOPEC+の減産継続と旺盛な米国の需要でWTI(ウエストテキサスインターミディエイト)価格は右肩上がりです。 それに経済失速がそれほどでもないのではないかとここ最近の指数で見直された中国の影響で本日も上昇中です。

 原油の価格はこれからも上昇する可能性は高く、その影響で増々物価は上がりそうです。 

ストライキ。

 エネルギー価格の上昇で物価が上がる中、消費者達は生活を営む上で物価の上昇に見合う給与を要求しています。 ここ最近増えてきたストライキ。 ストライキとは労働者による争議行為の一種です。給与の上昇や待遇の面で雇用側と交渉し、交渉がうまく行かなった場合には労働を放棄するというものです。 一般的に労働組合が雇用側と交渉します。

 最近では米国の脚本家や俳優陣によるストライキや日本では西武そごうのストライキをニュースで見た方も多いのではないかと思います。

 そして今問題になってるのはUAW(全米自動車労働組合)です。 UAWは米国の大手自動車メーカー3社(GM・フォード・クライスラー)や農業・航空宇宙部門の労働組合です。 会員は15万人にものぼり、このうちの自動車3社の労働組合が雇用側に4年間で40%の賃金上昇と物価に合わせた賃金上昇を交渉していましたが3社からの回答は要求より低かったことで15日からストライキとなりました。 3社の組合員が同時にストライキに入るのは前例がなく、例えば3社の組合員全員が10日間ストライキした場合の損失は56億ドル、日本円で8200億円にのぼると予想されています。

 ストライキが長引けば自動車の生産に影響がでて新車の在庫が減少し、その結果、下がってきた中古車価格等が再び上昇する可能性があります。 翻って労働組合の要求をのんだとしてもコスト上昇した企業はその分を価格に転換する可能性が高く新車販売価格の上昇につながりそうです。 また今回のストライキをきっかけに世界的なストライキに発展する可能性も捨てきれず大手の企業は労働組合からの賃上げ要求に頭を抱えそうです。

今後の投資はどうする?

 以上のCPI・PPIに見られたエネルギー価格の上昇と賃上げ要求が続きそうな現状を考えればインフレの再燃が現実味を帯びてきているように思われます。 今後ストライキは特に米国の他の業種にも波及しそうです。 大手配送業者であるUPSは要求をのみ、賃上げに応じました。 今後、賃上げが続けば企業のコスト上昇で業績悪化になるか、価格転換でさらなる物価上昇となるでしょう。 また、米国や中国の旺盛な需要が続けばエネルギー価格は高いままです。 

 それらを踏まえれば物価指数は再び上昇する公算があり、インフレの再燃となりそうです。 また、インフレが再び上昇すればFRBをはじめとする中央銀行は利上げを継続&上げていかなくてはいけなくなります。  そうなれば10年債の金利は上昇して投資家たちの資金は株から債券に流動して株は下落するでしょう。 危急な変化はないかも知れませんが、株は先を見越して動きますから今後のUAWの交渉結果と原油価格には細心の注意が必要となりそうです。 今、市場が考えてる利下げ時期はもっと先になるかもしれません。 その場合に市場は楽観から落胆に変わります。 そのセンチメントの移り変わりを注意して見ていかなければいけませんね。 

 私の米国に対しての投資戦略としては定期投資は続けつつ、個別株投資は季節性も含めて様子見としたい所です。 今月20日のFRBの政策金利発表は今のところ据え置きが優勢ですが今後の経済指標いかんでは11月のFOMCでは動きが出てきそうです。  9月のアノマリーを考慮しつつ来月からは米株を物色していこうと考えてますが、利上げの影響を受けやすいグロース株は控えたいと考えています。 (ここではあくまで私個人の見解を書いていますので投資は自己責任でお願いいたします。)

コツコツどかーん

投資歴4年程の投資初心者40代後半♂です。 インデックス投資と個別株、コモディティに仮想通貨、たまにFXもちょっとだけやってます。  個人的な投資経験と投資情報を自己流に発信していきます。 資金は少ないですが継続は力なり!で前向きに続けていきます。

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